結論から言うと、
カーラカを理解して初めて、動詞の能動態・受動態を正しく理解でき、
動詞の能動態・受動態を正しく理解して初めて、名詞の格活用が意味を為すからです。
「カーラカは知らないけど、能動態・受動態は知ってる!」というかも知れませんが、
カーラカは、ものごとの認識を助けてくれる為の、言葉(=コンセプト)というツールです。
つまり、言葉は認識の道具ですから、
ジャムの蓋を掴むための濡れ布巾のように、あるとないとでは、
掴めているか掴めていないかの、大きな違いが出て来ます。
能動態・受動態など、当たり前で簡単なことですが、
カーラカという独立したコンセプトを把握していなければ、
名詞との関係の掴みが非常に甘くなります。
サンスクリット語を何十年も勉強していても、
これをきちんと理論的に理解し、文章読解の要や軸として捉えている人は、
ほとんどいないに等しく、(!!!特にインド人!!!)
理論的な文章読解が出来ない人の多いことに気づいたのですが、
その原因は、カーラカとヴィバクティがごっちゃになっているいるからと見ています。
サンスクリット語の動詞の接尾語は、
・ その行動の主体(カルターというカーラカ)
もしくは
・ その行動の対象(カルマというカーラカ)
を指すことが出来ます。
(行動そのものであるBhaaveはここでは割愛します。)
動詞の接尾語が行動の主体(カルタ―)を指している場合、
その動詞は「カルタリ」(能動態)となります。
動詞によって指されている(Denoteされている)カルタ―を指す名詞は、
第一格(カルタリ・プラタマー)で、
動詞によって指されていない(Denoteされていない)カルマを指す名詞は、
第二格(カルマニ・ドヴィティーヤー)で、
表現されます。
動詞の接尾語が行動の対象(カルマ)を指している場合、
その動詞は「カルマニ」(受動態)となります。
動詞によって指されている(Denoteされている)カルマを指す名詞は、
第一格(カルマニ・プラタマー)で、
動詞によって指されていない(Denoteされていない)カルタ―を指す名詞は、
第三格(カルタリ・トリティーヤー)で、
表現されます。
カーラカというコンセプト無しでは、これをきっちり教えられません。
動詞と名詞を折り目正しく教えるには、カーラカは必須です。
また、Krdantaを教える時にも、カーラカは必須ですね。
このような単語の認識の順番を、私は最初のうちにしっかり頭に刻みこむようにして教えます。
こうやって、動詞をきっちり理解して初めて、名詞の格活用の意味が正しく理解できるからです。
既存のサンスクリット語の初等教科書は、能動態ばかりを教えます。
私の意見では、能動態と受動態は、違いが分かるようにワンセットで教えるべきです。
そして既存の教え方のように、
ラーマハ、ラーマウ、ラーマーハ、、、と機械的に暗記させて、
「第一格は主語で、第二格は目的語ね~」
と最初の段階でセットしてしまうと、一生混乱から抜け出せなくなります。
私は、格活用表も、一気に覚えさせて、一気に暗唱させることに、意味が見出せません。
生徒のコンプレックスを増長するだけで、苦労の割には、実際の文章読解にはあまり役立ちません。
格(ヴィバクティ)を一段ずつ、カーラカとそれ以外の意味との繋がりを教えながら、
練習しながら教えていきます。
客観的・理性的な思考の出来る大人の、理解ベースの教え方です。